vbnm1005の日記

恥をかき集めた

見知らぬお年寄りが、泣いた

私はお年寄りや外国の方に話しかけられやすかった。過去形。

浪人時代、アーケードを突っ切って通学していたのだが、2日に1度は捕まった。

たまに乗り物に乗れば、隣の席の人と親しくなった。高校時代、ワープロ部の大会にいく前日に、絶対新幹線の隣席と仲良くなるべ、と某恩師に言われた記憶もある。

京都に来てからそういったことがほとんどない。頻度が激減している。

 

 

私は先ほど、二条駅ビルの寿司屋にサービスランチ760円を食べに行った。

久しぶりにスキルを発動。

95歳のカウンター隣席のおじいさんは、おもむろに半生をポツポツと語りはじめた。

 

スキル発動の要因は、すっぴんだったからではないか、と思った。

しかしよくよく考えてみると、私は化粧はうまくもないし濃くもない。違いは、私の心もちにしかないのかもしれない。ただでさえない自信がよりいっそうなくなるから。

私は毎朝(というと盛っている、まず起床時間という観点から)自信をゼロ地点にもっていこうと試みている。つまり化粧のモチベというのが、自分の嫌いな部分を誤魔化すことにある。

今日は久々に話しかけられた、ということはもしかして、このどうしようもなく腫れぼったいまぶたと毛虫のような眉毛が「隙」となって、話しかけやすさ、親しみやすさを演出していたのか?つまり、私の化粧は上達したということなのか~??

 

それはさておき。

 

おじいさんはポツポツと話したあと、「こんなじいさんが話しかけてごめんなさい、孫と同じくらいの年頃で」と焦っていた。なんか無性に、胸がぎゅっとなった。 

その微妙な空気を打ち消すかのごとく、カウンターの若い職人(たぶん私と同世代)が、おじいさんに対して「お嬢さんをナンパですかー?困らせちゃダメっすよ~」と笑い飛ばした。

するとおじいさんが泣いた。「死んだ嫁しか、知らないんだ」と。

 

どうしていいのかわからなかった。甘いはずのたまごがしょっぱかった。

ものすごい勢いで赤だしを飲み干して、「今日はお話しできて光栄でした。どうかお元気で」と言い残すことしかできなかった。

 

もっとちゃんと相づちが打てたんじゃないかな、もっとうまく話を引き出せたんじゃないかなと、次から次へと後悔が押し寄せてくる。

そして、私の口のなかにほのかに残る魚臭さが、先程の記憶が嘘ではなかったことを物語っている。

 

おじいさん、どうかお元気で。

 

綾鷹を飲み干して生臭さを消すことで、込み上げてくる涙を引っ込めることしかできない。